クロイスターズ美術館 – The Met Cloisters

日常生活

渡米して間もないころ、夫のお洒落なクラスメイトにおすすめの美術館を聞いたところ、有名美術館の他にThe Met Cloistersが素敵だよと教えてもらいました。マンハッタンの中心地から少し離れたエリアにあるこの美術館には、Fort Tryon Parkという大きな公園に入り、坂を上っていくとたどり着くことができます。まるで中世の世界に入り込んだような特別な雰囲気で、なんとも去りがたい気持ちにさせてくれる美術館でした。

ロケーション – 住所は、99 Margaret Corbin Drive, Fort Tryon Park, New York, NY 10040 で、地下鉄に乗っていく場合はDyckman St Stationあるいは191 St Station が最寄りです。行きと帰りで両方の駅を使ってみましたが、191 St Stationは地上出口から電車ホームにたどり着くまでに、かなり長い地下通路を通る必要があります。壁面にグラフィティが盛りだくさんの独特な地下通路で、お好きな人は楽しめるかと思いますが、あまり好みではない場合はDyckman St Stationの方が利用しやすいかもしれません。バスを使う場合は、「M4」に乗ると美術館の目の前で停車します。付近に駐車場も多いので、車があれば楽かもしれませんね。

フォート・トライオン公園を上っていくと美術館に近づきます。上る途中にハドソン川が見えてリフレッシュできます。
この時は晴れる一歩手前で、思いっきり曇っていましたが…。
クロイスターズの外観。

建築 – 1933年建築開始、1938年オープン。Charles Collensによるデザインで、フランスの中世の修道院の一部分を解体し、取り入れている。ベースとなった修道院は、サンミッシェル・ド・キュクサ(南西部)、サン・ギレーム・ル・デゼール(南部)、トリー・シュル・バイズのカルム修道院(南西部)、フロヴィル(北東部)、ボヌフォン・アン・コマンジュ(南部)の5つ。いずれもロマネスク・ゴシック様式とのことで、これらの修道院に調和するように美術館全体がデザインされていると感じました。確かにロマネスク特有のどっしり感(壁が分厚く、窓が小さい)と、ゴシックらしい装飾性(壁は薄く窓が大きめ、「トレーサリー」と呼ばれる窓の上部に施された植物・幾何学模様が特徴)が組み合わさっているように見えました。渡米前に出席していた大学院の授業で、ちょうどこれらの建築の特性について論じている文献を読んでいたので興味深く建物を見て回ることができました。こちらのページで、ロマネスク、ゴシック建築について分かりやすい説明がなされているので、興味のある方は読んでみてください。

精巧な作品3点。左はなんと織物!右上はものすごく、ものすごく小さい彫刻品。お米に文字を描く人を思い出すほどでした。
右下は髪をとかすコーム。素朴な動物模様に心惹かれます。

所蔵品 – 建物内に展示されている中世の彫刻品は、George Gray Bernard (パリで学んだ19世紀初期のアメリカ人彫刻家であり美術収集家)のコレクションを、John Rockfeller2世が買い取りMETに寄付したものなのだそうです。ロックフェラー氏には、中世ヨーロッパの美術品を集めた美術館をニューヨークに作る!という望みがあり、そのために700エーカーにも及ぶ土地をハドソン川沿いに購入したのだとか。セントラルパークの広さが832エーカーほどだそうなので、ひと回り小さいくらいですかね。また美術品については、J.P.モルガンやMETの7代目館長George Blumenthalらの寄贈品なのだそうです。

あまりにも美しい回廊!ジャスミンの植木鉢があるためか、とってもいい香りがします。
ところどころにベンチがあり、座ってお話をしている訪問客もいました。

中庭 – おそらく美術館の1番の目玉となるエリアです。最初に挙げた中世の修道院の柱が活かされており、近づいて見てみると、非常に凝った作りになっていて、植物が立体的に形作られています。ウィリアム・モリスが好きな人にはきっとたまらない魅力を感じていただけるでしょう…。アールヌーヴォーほど曲線的・装飾的すぎず、どこかプリミティブで、どっしり感を備えているところが私の心に刺さります。美術館名の「クロイスターズ」はこの回廊のことを指すようですね。

柱に囲まれたエリアには季節の花々が植えられて、専属の庭師の方々が手入れを行っているようです。植物の選定にも気を遣っていて、修道院に植わっていたものを取り入れているそうです。

もう少し暖かくなれば、さらに美しい庭を望めるかと思います。ぜひお訪ねください!