周遊旅行④コロラド南西部~ジョージア州アトランタまで

アメリカ

2022年9月に行った、3週間のアメリカ横断旅行の振り返りです。

過去の記事はこちらから。


旅行11日目午前、コロラド州テルユライドを出発した私たちは、車で1時間40分ほど南下して「Mesa Verde National Park」(Mesa Verde, CO)へ。こちらでは、12世紀末から13世紀中頃までの間に先住民族の古代プエブロ族が建造し暮らしていた居住跡を見ることができます。ここが独特なのは、その建設場所!なんと崖の中に家が建てられているのです。ぜひ見てみたい。

私たちは例によって、「America the Beautiful」パスを入口で提示して園内に入り、お目当てのエリアまで延々40分ほど車を走らせました。車は文句ひとつ言わず、我々の旅行の欠かせぬお供として大活躍です。毎度のことながら、入口から観光スポットまでの距離がかなりあります。メサヴェルデ国立公園は、入場料さえ払えば(あるいは入場パスさえ提示できれば) 一応自由に見て回ることが可能ですが、最大の見どころと言っても良い居住跡への立ち入りは、予約必須!

の3か所については、Recreation.govで事前にチケットを予約しておくのが安心です。今回は利用しませんでしたが、Visitor Centerや園内のカフェ兼お土産屋 Far View Terrace Cafeでもツアーの予約を受け付けているようです。Balcony Houseは特に競争率が高く、私がチケットを見ていたタイミングでは空きがありませんでした。そのため、今回はCliff PalaceとLong Houseの2か所を訪問することに。Cliff Palaceは到着の当日、Long Houseは翌日午前に予約を取り、余裕を持ったスケジュールで周ることにしました。一つ注意したいのが、どのツアーに参加する場合も現地集合・現地解散になるということです。ツアー予約時に送られてくるメールの一部を抜粋します。

細かい~!と思いましたが、本当にこの通りの時間配分で進みます。Long Houseのツアー集合&解散場所は、駐車場から20分ほど徒歩で歩いた地点に設定されているので、早めに行動するようにしていました。

まずはCliff Palaceです。午後3時開始のツアーに参加しました。

最寄りの駐車場に車を停め、崖を少し降りたところが集合場所です。午後の時間帯は日差しがギラギラ。暑いので、きちんと水を飲むようにとの看板が立てられています。水以外の飲食物は一切禁止です。
集合場所から見下ろすとこんな景色が。「世界ふしぎ発見」を思い出す雰囲気です。私たちの一つ前のツアー客が居住跡を観光中。

Cliff Palaceのツアーは30分間と短めです。ツアー入口に「レンジャー(Ranger)」と呼ばれる制服の係員が現れ、ツアーの概要を話した後、ひとりひとりのチケットをチェックし、先へ通してくれます。そこから少し歩き、居住跡に近づくとまた別のレンジャーが現れ、建物の使われ方や先住民族の暮らしについて説明してくれます。最後には質問コーナーも設けられ、興味津々のお客さんたちが様々な質問をぶつけていました。私たちが訪ねた時間帯のCliff Palaceのレンジャー隊は、全員がボランティア!制服の胸辺りに着けてあるバッジを見ると分かるようになっているのですが、意欲的なスタッフが楽しそうに解説してくれるのは嬉しいですね。

私たちも下に降りてみました。間近で見ると、形状の異なる砂岩を積み上げて壁を作っているのがよく分かります。100人ほどがかつて生活しており、家として、あるいは集会場として各部屋が使い分けられていたそうです。集会・祭祀用に使われていた広い空間は「キヴァ(kiva)」と呼ばれています。

メサヴェルデのパンフレットによると、砂岩はパン一斤程度の大きさになるよう整えられ、泥と水を混ぜ合わせてモルタル代わりにし、壁になるよう積み上げられていったそうです。各部屋は用途に応じて作られる位置が決められており、低い場所に作られているのが集会・祭祀用の広場、その上が居住用の部屋 (2~3人程度が暮らせる180cm~240cm程度の広さ)、さらにその上が食糧貯蔵室という配置になっています。祭祀の内容は、病からの回復や、恵みの雨、狩猟の成功、穀物の実りを願うものだったそうです。また、火を扱っていたであろう部屋には煤の名残りが壁に見られ、換気設備としての用途を果たす通気口も確認することができました。シンプルながら工夫の凝らされた建物です。私たちは現在、大河ドラマの『鎌倉殿の13人』を観ており、時代はちょうどこのメサヴェルデの遺跡が使われていた頃と重なります。ドラマでは、鎌倉殿を始めとする位の高い人々が居住する豪華なお屋敷を見ることが多いので、この遺跡と比較してみた場合の生活環境の大きな差を感じました。レンジャーによれば、先住民族は元々、崖上で長く生活していましたが、厳しい日差しや外敵から身を守るため、食糧貯蔵のためにこの崖下部分に移り住んだのだそうです。少しでも快適に暮らせるよう、工夫を続けていたことが伝わってきました。

遠くからも撮影しました。崖下の影ができる場所は特に涼しく、食料の備蓄用倉庫としての役割を果たしていたそうです。

Cliff Palaceの観光を終え、園内にあるロッジ「Far View Lodge」に向かいます。ここは公園内で唯一の宿泊施設で、日をまたいで観光したい人にはお勧めです。ただ、部屋によっては空調設備?の音がかなりうるさく聞こえることもあるようで、夫はほとんど寝られなかったと言っていました (私は気にせず寝ていました…)。翌朝、隣の部屋の人も私に話しかけてきて同様の不満を相談してきたので、音が気になるタイプの人は耳栓を準備していった方が良さそうです。ロッジ付近には明かりが少ないため、夜になるとたくさんの星々を見ることができました。


メサヴェルデ2日目の午前中は、Long Houseツアーに参加です。最寄りの駐車場に車を停め、20分ほど歩いて集合場所に向かいます。昨日のCliff Palaceと同じく、入口でチケット確認をした後に先へ進むことができます。

Long Houseの全体像です。こちらは、写真左側に見える長い梯子をのぼって、建物の裏側にまわり、より近くから壁や部屋を観察できるようになっています。ツアー時間は1時間程度でした。
先陣を切って梯子を上るレンジャー。
梯子を上り建物の裏側に回ると、壁の説明が始まりました。壁を部分ごとに区切り、几帳面に石が積み上げられている部分と、おおざっぱに積まれている部分とを比較しながら、「同じ人が作った物だと思いますか?」と問いかけてくれます。たった一面の壁をとっても、きちんと観察すれば、複数人が建設に関わったことが察せられます。
レーザーポインターを使いながら、壁や部屋について細かく解説をしてくれるレンジャーさん。Cliff Palaceの時よりも念入りだなと思っていましたが、どうやらLong Houseのレンジャーは国立公園の職員のようで、制服に金色のバッジが着いてました。より詳しく専門的な話を聞きたい場合は、Long Houseへ来るのもお勧めです。

このような地で暮らしていくのはいかにも大変そうですが、レンジャーさんによると、先住民族の生活は苦しいばかりではなく、楽しみもあったとのこと。それは、彼らが制作した器や雑貨を見れば分かるのだそうです。器は、生活の必要に迫られて間に合わせで作られたものではなく、凝った形で模様も工夫されており、生きるか死ぬかの瀬戸際であればこんなものを作ることはできなかったはず、と言っていました。レンジャーさんはさらに懐からケースを取り出し、小さな石を私たちに見せてくれました。それが羊のような形をしていたのです。子どものおもちゃとして使われていたと推測されるその石の、なんとかわいいこと。お土産化してほしいくらいでした。レンジャーさんはツアーの締めくくりで、「先住民族も、デザインされた器を使い、子どものおもちゃに親しみながら生活をしていました。そういう点では、私たちと何ら変わりのない人々だとは思いませんか?どうか自分たちとは全く異なる人々と思わず、身近な存在として考えてみてください。」と語りかけていました。さすが国立公園の職員さん、話の収斂のさせ方が見事で感動しました。


旅行12日目、メサヴェルデのツアーを終えた私たちは、午後からニューメキシコ州アルバカーキ(Albuquerque)を目指し、南に向かって進みます。所要時間4時間50分!州都のサンタフェに行けたら良かったのですが、翌日からの走行ルートの都合もあり、今回はアルバカーキのみを訪問することに。

アルバカーキについては何も知らない私たちですが、テルユライドでお会いした映画&TVプロデューサーのJさんから耳寄り情報を入手していました。Jさん、撮影のため数か月アルバカーキに滞在していた経験があるそうで、このレストランは良かったよ!と勧めてくれた1件がありました。夕食はそこを事前予約していたので心配なし。いざ向かってみると、住宅街?…の中に、何やら素敵にライトアップされたお店がありました。「Farm & Table」(8917 4th St NW, Albuquerque, NM 87114) というニューアメリカ料理店です。

ニューメキシコらしい、日干し煉瓦を使った建築です。
ビーツのサラダ / ポークチョップ / ティラミス です。目が覚めるようなおいしさでした。

大満足で宿泊場所 (この日もAirbnb) へ戻り、ゆっくりと休みました。


旅行13日目は、ニューメキシコ州からテキサス州を経由し、オクラホマ州のオクラホマシティへ向かいます。この日の運転はこれまでで最長の8時間。延々と I-40 を走り続けました。いつもはお店で昼休憩を挟みますが、この日はそんな時間もなかなか取れないかも?と思ったので、アルバカーキを出発時に最寄りのWhole Foodsに行き、お惣菜を買っておきました。サラダ好きなので、山盛りの野菜を詰めて…。

長時間の運転が続く場合、運転をしない方が助手席をフルフラットに倒してしっかりと寝ることにしています。ブランケットと小さな枕、夫はアイマスクを装着し、快適に眠ることができました。

そしてようやくオクラホマシティに到着し、中華料理店「Fung’s Kitchen」(3231 N Classen Blvd, Oklahoma City, OK 73118) にてテイクアウトした食事を、この日の宿泊地 (またまたAirbnb) で食べました。今回の長い旅行中で一番大きな物件で、夫と私はそれぞれ1部屋まるごと使い放題、キッチンもリビングルームも広々と快適なところでした。洗濯機・乾燥機が内蔵で、しかもMaytagの大型機なのも長期旅行者にはありがたかったです。洗濯物が無限に入るような気がしました。

滞在中、室内に置かれたゲスト用のマニュアルを読んでいると、この宿泊地のオーナーがご近所で書店を営んでいることが分かりました。どんなお店なんだろうかと気になり、翌日の朝に行ってみました。「Commonplace Books」(1325 N Walker Ave #138, Oklahoma City, OK 73103) というところで、本のセレクトも素晴らしかったです。文房具も少し置いてありましたが、こちらもセンスが良かった。

通りに面したガラスからたっぷり光が入る、明るい書店です。奥では、店員さんが忙しそうに本の整理をしていました。

旅の14日目は、オクラホマシティから東へ、アーカンソー州を経由してテネシー州メンフィスへと向かいます。運転時間は6時間40分。ただ通過するだけももったいないので、お土産物屋やガソリンスタンド併設のショップに立ち寄りながら、ご当地マグネットを収集します。

ガソリンスタンドは数あれど、今回のロードトリップで特に利用したのが、高速道路沿いによくある Love’s というチェーン店です。オクラホマシティを拠点としてアメリカ各地に店舗を構えており、中西部で店舗数が多いです。初めはたまたま寄っただけだったのですが、店内に入ると、他店に比べて明らかにお客さんが多く驚きました。人気の秘訣は何だろうかと観察したところ、こちらの店舗は食べ物の取り扱いが他店よりも充実しており、トイレがきれいで新しい!清掃中のスタッフを何度も見かけたので、きっと頻繁に巡回しているのだと思います。Love’s ではご当地マグネットも必ず取り扱いがあり、町中のお土産物屋に寄る機会がないときはここで買うようにしていました。

Love’sで買ったご当地マグネット。今後なかなか訪問できなさそうな南部のマグネットを調達できてうれしい。抜けているアーカンソー州はポストカードを買ってあります。

さて、私のささやかな楽しみであるマグネット調達を進めつつ、夕方にテネシー州メンフィスに到着しました。この日は夫が助手席で気持ちよく寝すぎたために、ノンストップ3時間半の運転をする羽目になってしまった私。連日の旅の疲れも合わさって疲労困憊です。どこか地元で人気のお店を…と探し出したのが、「Charles Vergos’ Rendezvous」(52 S 2nd St, Memphis, TN 38103)。バーベキュー店です。

赤いギンガムチェックのテーブルクロスを見ると、地元のカジュアルなお店に来た~!という感じがします。店内には、なんと小泉元首相が来店した時の写真が飾られていますよ。
看板メニューの「Rendezvous Charcoal Pork Ribs served with beans & slaw」と「Beef Brisket」を注文。サイドメニューのコールスローにはマスタードが入っており、やや辛めです。おいしい!

地元の薄いビールを飲みながら、肉にかじり付き、辛めのサイドメニューを食べながら、またビールを飲む。気が付いたらビールがあっという間に減っていました。今日はなぜか、この薄いビールが身に沁みるようにおいしい。そこで私は思い至ります。疲労困憊の体にガブガブと薄いビールを流し込んじゃうこの行動、もしや南部の労働者が過酷な労働を終えた一日の締めくくりにやっていたことかもしれないと…。妙なスイッチが入った私は、そこから南部の労働者の気分に浸り切り、ビールをすっかり飲み干しました。

役者気分で店を後にし、この日もたっぷりと眠りました。毎度のことながらAirbnbの宿です。


旅は15日目に入りました。メンフィスから、ミシシッピ州、アラバマ州を経由してジョージア州アトランタへ向かいます。アメリカ北東部を目指す場合、メンフィスから南下せずナッシュビル方面へ向かったほうが近いのですが、ナッシュビルは以前に行ったことがあり、また南部の州が初めてだったため、あえて遠回りルートを選びました。

: テネシー州メンフィスからナッシュビルを経由し、バージニア州へ入るルート (最短)。オレンジ: メンフィスからミシシッピ・アラバマ・ジョージア・サウスカロライナ・ノースカロライナ州を経由し、バージニア州へ入るルート。

遠回りルートを走行中、ミシシッピ州でガソリンが2ドル台に突入したときはやたらと気分が高揚しました。この時までにガソリン給油は17回、$560に達していたため、安くなってくれるのはとても嬉しかったのです。小さな喜びを噛みしめながらジョージア州に入り、州都のアトランタが近づいてきました。

アトランタに近づくにつれ、何やら車線が慌ただしいことに。6車線?7車線?正確な数は覚えていないのですが、車の台数が増え、高速道路の分岐も複雑になり始めました。右側の2~3車線が次々と出口専用レーンに切り替わり、惑わされる車が続出。たいていの高速道路は一番右側の車線だけが出口専用になるので、右を2つ、3つも封じられるとなかなか面倒です。そんな中、速度を緩めず方向指示器も出さずにジグザグ運転をする車が後を絶たないため、まあ~危ない!実際、衝突事故を起こしている車が何台も路肩に停車しており、かなり注意を要する区間でした。今回の道中で一番運転が難しかったのがアトランタだったことは断言できます!

なんとか車を守り切り、アトランタの町中に着きました。観光客らしく、まずは「World of Coca-Cola」(121 Baker St NW, Atlanta, GA 30313) へ。薬剤師ジョン・ペンバートンによるコカ・コーラの発明に始まり、ビジネスとして世界中に展開する過程がパネル形式で示されており、製造のおおまかな工程も知ることができます。肝心のコカ・コーラのレシピが秘密とされているので、その秘密以外の部分でお客さんを楽しませる必要があり、試飲コーナーやギフトショップがその役割をしているのかなという印象でした。

一通りWorld of Coca-colaを見て回った後は、本日の宿 (Airbnb) へ。アトランタ市内にある大きな一軒家の一部がゲスト専用スペースになっていました。日中は電気をつけなくても明るく、アメニティも豊富で行き届いた素敵なお宅です。

ソファ前に置いてあるマニュアルを読み、ご近所のおいしいレストランを探し当てます。お部屋は清潔に保たれていながらも神経質っぽい感じはない、リラックスできる空間づくりがされていて心地よいです。

せっかくなら南部料理をと、オーナーさんおすすめのレストラン「Wisteria」(471 North Highland Avenue Northeast, Atlanta, GA 30307) へ行くことにしました。南部料理を現代的にアレンジしたレストランのようです。

(左) Diver Scallops Fennel Crusted (George’s Bank) – お米のグリッツとホタテ。※南部料理の定番、とうもろこしを挽いて作ったお粥の「グリッツ(grits)」を、お米にアレンジしたもの。(右) Grilled Pork Tenderloin Molasses Rubbed – りんごのソースがかかったグリルドポーク。さつまいものピュレが上に載っています。

とろり&甘辛が南部料理の特徴なんでしょうか。グリッツにはオクラも入っていました。どちらも多すぎない量でおいしく、食べ切りました!

良い気分で帰宅し、宿に付いていた洗濯機をありがたく使わせてもらいました。翌日からはアメリカ北東部に向かって北へ北へと進みます。