Fallingwater (落水荘) 見学

アメリカ

夫の試験期間終わりに、ペンシルベニア州ピッツバーグとオハイオ州クリーブランドに行ってきました。ピッツバーグ郊外にあるフランク・ロイド・ライトの建築Fallingwater (落水荘)を観に行くのが主な目的で、そのためにNYから車で6時間かけました。

ルートを検索すると以下のように提示されまして、ほぼ西向きに進んでいくことになります。私たちは夫の試験終わりの日の夕方に出発し、マンハッタンから車で2時間ほどのところにある中継地点のアレンタウン(Allentown)という町で一泊、翌日の朝に4時間かけて落水荘まで行きました。結構な走行距離になるので、車で行く場合はドライバーが2人以上いる方が楽です。

アメリカのロードトリップでは、長い走行距離もだんだん見慣れるようになってきますね。

Fallingwaterの見学にあたっては、公式ページからの事前予約と入場時のワクチン接種証明の提示(5歳以上の場合)が必要です。午後の訪問しやすい時間帯(12時~14時ごろまで)は早めに予約が埋まる場合があります。様々な種類のチケットが販売されていますが、ぜひガイド付きツアー (現在はひとり$32、6歳未満の購入は不可) の購入をお勧めします。ガイドは英語のみになりますが、1時間かけてガイドさんが家の見どころや建築時の裏話をしてくれます。

1. まずは家までの広い敷地を歩きます。今回私たちのガイドはRoyさんというトム・ハンクスっぽいおじさんでした。

メインハウスまでの道を歩きながら、Royさんが話してくれた内容をまとめると、

  • Fallingwaterは、ピッツバーグの著名な実業家であるKaufmann一家のweekend homeとして建築された。父Edgar Jonathan Kaufmann(1885-1955)は、後にMacy’sとなるピッツバーグの百貨店Kaufmann’s Department Storeのオーナーを務めた人物(※元々は、いとこであった妻Lilian(1889-1952)の実家がKaufmannデパートを経営していた)。1930年代、ニューディール政策下のピッツバーグでの公共事業に深く携わり、洪水対策、大気汚染対策、インフラ整備の改善に尽力する。
  • Kaufmann夫妻は、ピッツバーグの流行の最先端として知られ、現代芸術や建築に精通していた。一人息子のEdgar Jr.(1910-1989)は絵画への関心が高く画家となったが、フランク・ロイド・ライトの著作を読み感銘を受け、ライトに会いにウィスコンシン州まで出向き弟子となった。1934年、修行中の息子を訪ねにライトのスタジオ(Taliesen)へやってきたKaufmann夫妻は、そこで初めてライトと対面する。数々の功績を聞いていた夫妻は、その後すぐに自分たちのweekend homeを建築してほしいとライトに依頼。
  • Fallingwaterは1935年にライトによって設計された。地元の石工が砂岩の加工に尽力。メインハウス、ゲストハウス、2つをつなぐ渡り廊下と建築を続け、1939年に完成した。1963年には、Edgar Jr.が非営利団体Western Pennsylvania Conservancyに建物と敷地一帯 (469エーカー)を寄付。2019年にはUNESCO世界遺産に指定された。Edgar Jr.はFallingwaterの寄付後も、週末にふらっと訪れては、素性を隠してガイドを務めることがあった。一通り案内した後、最後に”This is my home.”と言って、ツアー客を楽しませていたらしい。
2. 手前に見えるのがメインハウス、奥の高いところに見えるのがゲストハウスです。屋外は写真撮影が自由なので、ガイドの話はそこそこに、皆さん写真を撮りまくります。
3. 「よくある箱型の家は作りたくない」という強い思いによって、様々な方向に突き出たりへこんでいたりする外観になっています。1階のリビングには下向きの階段が付いており、自由に川のそばへ近づけるようになっています。
4. 玄関は意外にもコンパクト。Secure (安心・安全) な雰囲気を感じられるように、この家では要所要所に狭く小さく作られているところがあるそうです。※現在、屋外でのマスク着用は義務ではないようです。
5. 玄関を入ってすぐのところにある広いリビングエリア。外の景色を楽しめるように、壁一面がガラス窓になっています。窓のフレームには、チェロキーレッドと呼ばれるオレンジがかったえんじ色の塗装が施されています。
6. 先ほどの写真の位置から振り返ったときに見える部分。奥のタペストリーがかかっている横に玄関があります。天井は決して高くなく、机や椅子は低めのものが選ばれています。玄関のそばにはレコードプレイヤーが置かれており、ゲストが来るときは感じのいい曲(ジャズだったかな?何のジャンルだったか忘れてしまいました)をかけておくんだそうです。
7. 上の2枚の写真を引きで見るとこのような感じ。あたたかみのある照明の色、低めの天井、岩や木を多く取り入れた内装、ガラス窓越しに見える緑、川や滝の水の流れる音…ゆったりと落ち着ける雰囲気に癒されます。
8. ポップな色のクッションがかわいいですね。
9. 暖炉の横にある球体は、なんとお酒を入れておく入れ物。たくさんゲストが来た時に使うんだそうです。デザインにちょっとアジアっぽさを感じます。
10. 意外にも、ダイニングエリアは小さめです。招かれたゲストが自由に歩いて飲食できることを優先させたのかもしれませんね。できるだけ堅苦しさを排するように心がけてあるように見えます。
11. 3の写真で見えていた下向きの階段を室内から見るとこうなっています (5の写真に映っている本棚の奥)。来客時にはこのガラス扉を開けて、自由に川にアクセスできるようにしていたそうです。
12. あちこちに広めのテラスが設置されています。
13. ベランダから見える景色。
14. 外から見える景色。水の流れる様子がきれいですね。

写真撮影OKだったのは、この1階部分だけでした。2階以上には寝室や書斎がありましたが、部屋はいずれも小さめの作り (6~8畳くらい?) で広めのテラス付き、寝室については各部屋にバスルームがありました。一般に「豪邸」というと、天井が高く、広い部屋を想像しますが、がらんとした寂しい雰囲気も生まれてしまうことがあります。この家では、secureな雰囲気でくつろげるように、あえて小さい作りの部屋を設計したのだとガイドさんは説明してくれました。

メインハウスの見学が終わった後は、ゲストハウスの見学に移りました。こちらは写真撮影不可です (のはず。ツアーの参加者で写真撮ってる人もいましたが、厳密にはどうなんでしょう。ガイドさんも気づいていないのか、あまり気にしていないのか、特に注意はしていませんでした) 選び抜かれた装飾品は、特定の宗教・ジャンルにこだわらないことがポリシーだったようで、大昔の彫刻品や浮世絵もあちこちにさりげなく飾られていました。アメリカ郊外の建築で、浮世絵がこうして不思議と調和している様子が興味深かったです。このゲストハウスには、かつてあのアインシュタインも招かれたことがあるそうです。

まとめの感想としては、素晴らしい建築を見られるだけでなく、ガイドさんが本当に丁寧に説明をしてくれるので時間を忘れて見学を楽しむことができました。ミュージアムショップも併設されており、記念にパズルやポストカードを買って帰りました。

インフォメーション周辺も素敵なんですよ。
トイレもお洒落な雰囲気でした。

ちょっと遠いですが、それだけ行く価値のある場所でした。ぜひ見学に行ってみてください!